インタビュー記事

持続可能な地域医療連携の実現のために
医師向け会員制WEBサービス『ドクシル』スタート

出典:クリニックマガジン2023年9月号(株式会社ドラッグマガジン)
ドラッグマガジン2023年9月号(株式会社ドラッグマガジン) 

 医療用医薬品等卸売事業を中核として医薬品サプライチェーンをグループ一体となって支えているアルフレッサグループは、「22‒24 中期経営計画 未来への躍進 ~進化するヘルスケアコンソーシアム® ~」のグループ経営方針で「新たな価値の創造」や「地域の健康・医療への貢献」を掲げ、2022年7月に医師向け会員制WEBサービス『ドクシル』を運営する新会社「㈱ゲッカワークス」を設立した。『ドクシル』はどのようなサービスなのか? 企画と開発の中心人物である㈱ゲッカワークス取締役副社長の田畑氏にその狙いを聞いた。

インタビューに対応した㈱ゲッカワークス取締役副社長 田畑貴也

株式会社ゲッカワークス
設立:2022年7月20日。代表取締役社長 大橋茂樹。事業内容:情報システムを利用した医療・介護従事者向けコミュニケーションサービスの提供。

URL:https://gekkaworks.co.jp/

㈱ゲッカワークスの設立およびドクシルの開発の背景

 少子高齢化が進む日本において、地域で個々に役割・機能をもった医療機関が連携することにより、患者さまが急性期から回復期を経て自宅に戻るまで、切れ目のない医療を受けることができる環境を構築するため地域医療連携が求められています。一方では、医師の過重労働の問題を背景に、2024年4月から施行される改正医療法により、医師の働き方改革が推進されようとしています。
 医薬品卸のMSとして、これまで多くの医師の皆さまとお仕事をさせていただきました。担当先の医師が患者さまを紹介する際、その患者さまの住まいに近く、かつ病状にあった医師を見つけることに大変苦慮されていました。面識がないことや、標榜診療科や認定専門医までしか分からないことなどがその妨げになっていたのです。医療連携には、医師同士が知り合うことが必要で、そのためには、どこにその疾患に合った専門医師がいらっしゃるのかを把握しなければなりません。そこで立ち上げたプロジェクトが『ドクシル』です。持続可能な地域医療連携の実現のために、医師と医師がつながり、お互いの強みをもっと深く知ることで、医療の質と患者ケアの向上に貢献することを目的とした開発プロジェクトです。そのサービス運用を担う新会社として㈱ゲッカワークスが設立されました。現在、アルフレッサグループの医療用医薬品等卸売事業会社の一部エリアを対象に『ドクシル』の実証実験を進めています。

ドクシルの概要とその機能について

『ドクシル』は、医師専用のサービスです。実名医師の専門性データ※1や全国の医療機関データを活用して、地域の医師や遠隔地の専門医同士をオンラインでつなぐ医師向けの会員制WEBサービスです。開発過程では多くの医師からご意見を伺い、医師と医師の連携に向けて解決すべき課題にアプローチし、医師専用のサービスだからこそできることについて議論を深めました。
 具体的な機能(図1)には以下のようなものがあります。紹介や逆紹介先、相談相手などの検索に使える「医師/ 医療機関検索機能」、ドクシル会員だけが利用できるセキュアな環境下でのやりとりが可能な「メッセージ機能」、およびFAXや郵送で行っていた自院から他の医療機関へのお知らせをデジタル化する「お知らせ機能」などに加え、医師が情報や知識を共有するコミュニティを作成することができる「コミュニティ機能(図2)」は、『ドクシル』の主要な機能です。医師が多くの時間を費やされている仕事を効率化することで、医師の働き方改革に寄与し、持続可能な地域医療連携に貢献できると考えています。
 『ドクシル』を多くの医師や医療機関にご活用いただくことで、病病・病診・診診連携など地域医療連携を促進し、医療提供体制の充実や医師の働き方改革への貢献を目指します。

※1 医師の専門性データとは、オプトアウト規定にのっとり、厚生労働省が公表している医師データ、ホームページ等のインターネット上で公開されている情報、市販されている新聞や書籍の情報、医師自らが入力した情報および㈱エクスメディオが日本の論文・抄録約1000万本をAIで解析し算出した「ドクシル」独自のデータです。なお、個人情報保護法改正に伴い2022年4月よりデータを入れ替えております。

図1 『ドクシル』の機能

図2 『ドクシル』コミュニティ機能

医師が利用するにはどうすれば良いのか

『ドクシル』と検索していただき、WEBサイトからのご登録だけでご利用いただけます※2。医師専用サービスのため、会員登録には医師免許の情報が必要となります。
 加えて、「得意とする疾患・部位や手術・手技・治療方法」をご登録いただきます。上述の医師の専門性データに加えて、医師ご自身の得意分野の情報があることで、医師同士がお互いの強みを知ることができます。
 ㈱ゲッカワークスは、地域医療に貢献することを使命としていることから、より多くの先生方にご活用いただきたく、医師の皆さまにはサービスを無料提供しております。

実証実験の医師からの評価は

「働き方改革も進む中、外来機能分化の手段として医師の知見共有は重要であり、互いに診るべき患者さまを診るという、まさに病診連携につながる有効なツールと考える」「感染症など、タイムリーな情報共有ができれば、事前に対策を講じることができ、患者さまに安心して来院いただける」「逆紹介をする際、どの先生にフォローをお願いすべきか悩むケースが多々あるため、得意な分野を知れる検索機能は活用したい」「お互いの専門性を理解し合うことで地域医療に貢献するというコンセプトは共感できる。なかなか進まない診診連携、在宅医療への積極的関与にもつながる」といったお言葉を頂戴しています。
 現在進行していることとしては、基幹病院を中心とした専門医や地域の非専門医も含めた特定の疾患に関する連携コミュニティがあります。疾患にまつわる最新情報の受発信や、患者さまの症状や治療の相談に対するアドバイスなどにご活用いただいています。医師同士の情報や知見の共有を通じて連携が深まり、診療方針の理解や、患者さまへの治療継続サポート、および疾患の早期発見にもつながるとのご評価をいただいています。

ローンチ前の機能の改善・拡充の予定について

これからも、医師の皆さまからいただく貴重なご意見を反映させていきます。多くの医師同士に知り合う機会をつくり、つなぐことが、『ドクシル』の特長的なポイントです。患者さまの治療ニーズに応じた新しいネットワークが自然とつくられる場となるような『ドクシル』独自の仕組みを構築していきます。

今後の展望やメッセージ

 日本中の医師に、医療に関する幅広い知見をより一層得ていただくために、医師と医師とを適時適切、機動的につなぐことが『ドクシル』の最大の存在意義であると考えています。“『ドクシル』の利用をきっかけに、より良いパートナーシップを築いていただきたい” “ 全国の医師とつながることができる専用コミュニティをご活用いただくことで地域医療に貢献したい” そして、“ 患者さまを最適な医療につなげることで、健康寿命の延伸やQOL の向上に貢献したい” それが私たちの想いです(図3)。デジタルでのつながりの輪をつくり、それを広げ、より多くの患者さまとその家族に貢献するために、日本全国のアルフレッサグループのMSがリアルの活動で誠心誠意お手伝いします。医師の皆さまからのご意見を反映し改良を重ねていくことで、ビジョンとして掲げた「誰もが『最適な医療』を受けられる世界を創る」ことを目指します。

図3 『ドクシル』コンセプト