メディア掲載記事

ヘルスケア商材・サービスを的確に、効率よくお届けする

ドラッグマガジン 2023年1月号 特別企画「進化する医薬品物流」掲載記事

1環境・背景について

2025年をめどに医療や介護、生活支援などのサービスを一体的に提供する「地域包括ケアシステム」の構築が各地域で進められています。 地域内でさまざまな病院やクリニック、調剤薬局、介護関係の皆さま、およびその他の周辺職種の方々が連携することによる、重度な要介護状態となっても人生の最期まで住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けることができる体制づくりが求められています。 一方、人口減少、地域経済縮小、子育て、医療、介護をはじめとする地域における課題の解決には、関係者の密な連携に加えて次世代を見据えた新しいアプローチが欠かせません。 アルフレッサグループは医療用医薬品等卸売事業で長年培った知見と共に、他企業との連携により、地域医療への貢献の可能性を模索しています。 今後、在宅で医療や介護のサービスを受ける人が増加すると見込まれ、地域内でのヘルスケア商材のこれまでにはない物流ニーズが生まれ、高まると予想しています。労働人口の不足が叫ばれる中、患者さま一人一人の元へ、安心・安全・誠実にヘルスケア商材をお届けする社会課題の解決に取り組んでいます。

2医療機関への物流:ビッグデータ・AIを活用した配送業務量予測と適正配車のシステム導入

アルフレッサでは、デジタル技術を活用した生産性向上施策や、ヘルスケア商材の物流の高度化に取り組んでいます。具体的には、ヤマト運輸さまと共にAIを活用した配送業務量の予測システムおよび、配車計画システムを展開しています※1。これまでに蓄積した「販売」「物流」「商品」「需要トレンド」などのビッグデータをAIで分析し、顧客ごとの配送業務量(例.注文数、配送発生確率、納品時の滞在時間など)を予測することで、適正な配車台数を算出します。 これまでは、日々変動する配送ニーズの中で、月初や大型連休前など最大の配送ニーズに対応できるように、固定の車両数をそろえていました。これからは、AIを活用した配送業務量予測システムで約1カ月先にどれくらいの配送ニーズ、何台のトラックや配送車両が必要かを事前に予測することで、需要に合わせた配送車両の数や人員に変動させることができます(図表①)。現段階で90%以上精度の予測が可能になっています。 この予測データに基づき、約1カ月後に必要な車の台数だけを稼働させることを実現したいと考えています。日々の配送ニーズに応じた配車計画を組むことで、無駄な配車をなくし、コストだけでなくCO2排出量の削減も実現できます。導入効果の目標として配送生産性で20%の向上、CO2排出量で25%削減を目指しています。現在、一部の事業所で行っている実証実験では、10数~20%弱までの配送生産性の向上を実現できています。 生産性向上により創出できたリソースは、新型コロナワクチンや関連資材の流通といった突発的な配送ニーズへの充当や、地域包括ケアシステムの実現により地域で新しく生まれる配送ニーズへの対応に充てたいと考えています。特に地域での新たな配送ニーズに関しては、今後の労働力不足の対応策として、医薬品卸やプロの物流会社だけでなく、配送エリアの地元の方に参加していただきたいと考えています。例えば主婦の方やお仕事を引退された方、学生さんといったフルタイムでは働くことは難しいものの、ヘルスケア商材の配送で地元の医療にパートタイムで貢献したいという方に、働く機会提供ができないかということも検討しています。 そこで課題になるのがヘルスケア商材の配送であるためトレーニングが必要なことです。アルフレッサでは、その対応ツールとして、どなたでも大掛かりなトレーニグすることなく正確な配送ができるように、ナビタイムジャパンさまと配送支援の仕組み「saios(サイオス)」を共同開発しました※2 saiosはGPS機能を活用し、配送最短ルートをナビゲートするほか、医薬品の誤配送防止機能や安全運転分析機能などを搭載しています。アルフレッサでは全ての配送ドライバーのスマートフォンにsaiosアプリを導入しています。今後、地域で参加いただける方にもsaiosを提供することにより、不慣れな配送ドライバーにおいても高い生産性と品質の両立を可能にし、ヘスケア商材の安定供給を維持させていきたいと考えています。 一方、数十万種類のヘルスケア商材の検品については、物流センターの機械化と自動化を進めて検品を行い、画像チェックした上で密閉し、そのまま医療機関に届けるパッケージ納品システムを既に開発していますので、配送員が検品する必要がありません。このようにさまざまなヒューマンエラーを防止することで、ヘルスケア商材の配送を通じた地域医療への貢献に、どなたでも参画していただける基盤構築を目指しています。

※1参考:21年8月3日「ビッグデータ・AIを活用した配送業務量予測および適正配車のシステム導入について」

※2参考:18年10月17日「アルフレッサ株式会社と株式会社ナビタイムジャパンが医薬品配送の生産性向上を目指す『saios(サイオス)』を共同開発」

図表① ビックデータ・AIを活用した配送業務量予測と適正配車システム

3医療施設の物流:個別化医療支援プラットフォーム「NOVUMN(ノヴァム)」

バイオ製剤等の高分子医薬品の開発が進み、少量多品種で高価な医薬品が増加する中、「医療版かんばん方式」とも言える個別化医療支援プラットフォーム「NOVUMN」を開発し、医療機関への導入を進めています(図表②)※3、4 卸企業にて、2~8℃で管理する必要がある医薬品にRFIDタグを貼付し、医薬品情報の紐付けを行い、トレーサビリティの把握が可能な状態で出荷します。医療機関の保冷庫に、スマートケージを設置し入出庫を記録することで、自動で商品ごとの入出庫日・ロット・期限の把握を可能とし、商品管理の業務負担が軽減されます。 また、投与スケジュールを元に治療計画等を入力することで、発注アラートを送信し、投与スケジュールに基づく発注業務をサポートします。これにより医療機関の在庫量の適正化も可能となります。

※3参考:20年11月19日「個別化医療支援プラットフォーム「NOVUMN」の国内医療機関3施設におけるパイロット運用開始について」

※4参考:21年2月22日「個別化医療支援プラットフォーム「NOVUMN」の協議会設立について」

図表② 個別化医療支援プラットフォーム「NOVUMN」のイメージ

4在宅への物流:ラストワンマイル配送への取り組み

今後、オンライン診療や服薬指導が普及しますと、患者さまが調剤薬局から直接受け取っていた医薬品は、調剤薬局から在宅に配送されます。オンラインショッピング普及時のように、ヘルスケア商材の宅配ニーズが増えることが予想されます。これまでBtoBだったものが、今後はBtoBtoCまでの物流を考える必要があります。 アルフレッサはヤマト運輸さまのご協力のもと、調剤薬局から患者さまへの処方薬の配送に関する資材調達から配達、各種決済までをトータルにサポートするソリューション※5を提供しています。またスペシャリティ医薬品領域においてもHome Care Delivery ※6というサービス名称で、患者宅特殊配送サービスの開発に着手し、実証実験をしています。

※5参考:20年6月26日「アルフレッサ株式会社とヤマトロジスティクス株式会社による遠隔処方領域における相互協力に関する合意について」

※6参考:21年3月3日「スペシャリティ医薬品における患者宅特殊配送サービスのパイロット運用について」

5介護施設への物流:サブスクリプション型サービス「TRORINPA(トロリンパ)」

日本における誤嚥性肺炎による死亡者数は年々増加し、死因順位の6位に位置しています。介護施設では、誤嚥性肺炎を防止するため、嚥下機能が低下している高齢者に対し、1日3回の食事に加え、おやつや投薬などのタイミングで、飲料にとろみをつけて提供しています。利用者に合わせて手作業でとろみの状態を調整し、数種類のとろみ飲料を人数分作るなど、職員の大きな負担になっています。アルフレッサは、ヤマト運輸さま、森永乳業グループのとろみ調整食品メーカークリニコさま、とろみサーバーメーカー凰商事さまと連携し、サブスクリプション型サービス「TRORINPA」を、販売代理店の調剤薬局を通じて販売しています※7。ボタン操作のみ3段階の粘度のとろみづけができ、まとめ取りもできる「とろみサーバー」を設置し、サーバーメンテナンスや、とろみ調整食品等の定期配送を行います。介護施設における「とろみづけ」の効率化を実現し、介護施設の働き方改革も支援していきます。

※7参考:22年3月24日「介護施設における「とろみづけ」の効率化を実現するサブスクリプョン型サービス「TRORINPA(トロリンパ)」を4月4日(月)から開始」

6まとめ

当社グループの物流は最終的には全て患者さまのためです。25年に向けた医療需要の拡大、医療費抑制に伴う医療制度改革や物流人材の不足などの流れの中、当社グループの重要性は高まっていくものと認識しています。 医療従事者の皆さまがより質の高い医療を提供し、患者さまがそれを的確に効率よく受けることができる社会づくりに貢献するための物流サービスを提供していきます。これからも持続的な社会を実現するため、さまざまなステークホルダーの皆さまと共に歩み、「健康に関するあらゆる分野の商品・サービスを提供できるヘルスケアコンソーシアム」を目指していきます。