特別インタビュー

内田 信也 東北アルフレッサ(株) 
代表取締役社長
東北の地域医療に貢献

出典:政経東北 7月号(株式会社東邦出版)

 4年前に東北の医薬品卸2社が合併し誕生した医薬品・医療機器の卸売業東北アルフレッサ(郡山市)。新物流センターが2年前から稼働し、高い品質管理と効率化を進めた供給体制で新型コロナ禍の医療を支えている。4月に社長に就任した内田信也氏に現状や今後の見通しについて話を聞いた。

うちだ・しんや
1959年三重県松阪市出身。関西大学社会学部卒。
82年に昭和薬品(株)入社。2019年に東北アルフレッサ専務
執行役員営業統括副本部長。22年4月から現職

——4月に代表取締役社長に就任されました。率直な感想をうかがいます。

 「トップに立つ重責とともに、東北でリーディングカンパニーとして確固たる地位を目指したいと燃え立つ思いを持っております。2019年4月、まだ発足して半年だった当社に専務執行役員として赴任しました。営業の責任者の心構えでしたがまさか社長を拝命するとは当時は夢にも思っていませんでした。今自分がいる場が最後の仕事場と覚悟を決めています。家族も連れて東北に骨をうずめるつもりで赴任しました。
 グループ会社アルフレッサ(株)では人材開発部で部長を務めました。そこでの経験から、最後の勝負の決め手は人材だと考えています。当社は地域に根差した医薬品卸です。医療の一端を担うお手伝いをしていくうえで、これまでのお得意先との信頼関係を大切にしつつ、それを裏切らぬようますますスキルアップしていかなければなりません。経営やマーケティング能力を向上し、東北の地域医療に貢献していきます」

――東北アルフレッサが誕生して4年になろうとしており、2020年には新物流センターが稼働しました。現在の状況はいかがですか。

 「新物流センター稼働の年は新型コロナウイルス感染が日本で広まり始めた頃で、引っ越しと物流システムの稼働は困難の中で始まりました。『医療のロジスティクスを担う当社で感染を広めることがあってはいけない』と、苦渋の選択でしたが感染防止のため稼働を半年遅らせました。その分センター運用のシミュレーションが丹念に実施でき、万全の体制で稼働を始めることができました。
 パンデミック対策を見直す契機にもなりました。サーマルカメラで体温を管理し、自動倉庫システムでは限られた人員で稼働できます。当初の計画通り大災害に耐えうるセンターにもしています。免震構造と72時間以上の停電になっても自家発電ができるように燃料も貯蔵しています。センターに不測の事態があれば南東北3県への供給に多大な影響があると危機意識を持って備えています。
 センターの出荷精度は99・9995%です。その高い出荷精度をもって『パッケージ納品』を行っており、センターで検品したものを写真に撮って自動で封緘、お得意先にそのまま渡します。従来の検品時の接触を減らすことができてコロナ禍にかなった方法だと思いますし、お得意先への納品時に封印されたままの状態で受け渡しが可能であり、お互いに効率化が図れます。医薬品は国際基準を満たして供給しなければなりません。GDP(サプライチェーン全体に渡って医薬品の品質を保証する為の基準)と言いますが、例えば当社物流センターでは庫内温度を50カ所以上で常時計測するなど高度な温度管理をしています。更には、お得意先まで適正な環境で配達することが必要であり、センターだけでは完結しません。支店の施設等においても管理のレベルを高めるための、設備投資を考えています。
 国際基準の品質管理の重要性は、コロナワクチンの配送が良い例です。決められた温度を逸脱しては使えないという医薬品がもっと増えていくでしょう。今後も品質管理を徹底して、医薬品の流通という重大な役割を誠実に果たしていかなければなりません」

——医療系事業に携わる立場から、新型コロナウイルスの影響はどう見ていますか。

 「日本で感染拡大が始まった頃、社内で毎週コロナ対策会議を開き、感染を疑ったら勇気を持って積極的に休むという方針を出しました。最悪を想定した構えです。『私が休んだら誰かに迷惑がかかる』ではなく、『感染リスクがありながら出社することの方が大きな迷惑が掛かる』と意識を改革してほしい、と管理職やリモート会議、あらゆる媒体を通じ全社員に徹底しました。
 医薬品の物流にBCP(事業継続計画)は必須です。万が一センターに感染がまん延した場合を想定して、社内の応援体制によりセンターを稼働できるように訓練もしました。更には物流センターが南北に2カ所あり、非常時には互いにカバーすることが可能です」

――シェアを大きく占めていたジェネリック医薬品製造会社に業務停止命令などが出されたことで、供給不足を耳にします。御社への影響はいかがでしょうか。

 「国策でジェネリックを積極的に進める中で、メーカーの工場がオーバーワークになり、供給が間に合わないということで逸脱した作り方になったと耳にしました。業務停止命令を受けていない他の会社が短期間で増産するのは非常に難しいと思います。当社はお得意先に医薬品を安定供給することが使命ですが、物自体が不足しているので営業をするMS(マーケティングスペシャリスト)が頭を痛めています。お得意先に理解をいただいて、必要な患者さんに行き渡るよう苦心して差配しているのが現状です。
 現実問題今年中に解決は難しいでしょう。私見ですが、供給が戻るまでには2年はかかると思っています。世界的に見てもジェネリックを進める方針は間違っていません。安定供給を使命に当社ではできることをしていきます」

人への投資をより進める

——福島県内に本社を置く企業では売上高で2位(東京商工リサーチ調べ)となっています。今後の抱負をお伺いします。

 「規模としては一流に近づいていると考えています。その規模に応じた人材を育成していきたいです。東北の方々が当社に入社したいと思ったり、働きぶりを見て『さすがだな』と思われたりするように社員の質を上げていきたいです。医療機関からは当たり前のこととして、一般の方々からも一流と見られるような人材です。そのためには人への投資が必要です。外部機関の研修やコンサルタントの力を借りながら達成します。地域に根付いた企業として雇用も賃金も上げることも目標にしていきます。
 業界にはまだまだ『薬を売るだけ』というイメージがあると思いますが、『地域医療への貢献と健康づくり』を新たな理念にしていきたいです。2025年問題で団塊の世代が後期高齢者になります。病院だけでは対応できず地域包括ケアに移行します。そこで我々医薬品卸が医療・介護と連携してお手伝いしていくことが使命と思っています」