「良質な薬の新しい価値を掘り起こし、難治・希少疾患を治したい」
~㈱ジェクスヴァルとの資本業務提携について~
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<アルフレッサ ホールディングス㈱ トータルサプライチェーンサービス企画推進部メンバー>
写真左から、【1人目】小柳 陽一さん、【2人目】平井 真人さん、【3人目】北尾 有樹子さん、【4人目】鈴木 宏和さん
アルフレッサグループは、2032年度までの戦略「アルフレッサグループ中長期ビジョン」を策定しています。グループの4つの事業セグメントが一体となって医薬品等の開発・製造から流通、そして調剤薬局や患者様に至るまで一連の流れを一貫して支援する「トータルサプライチェーンサービス」の強化と拡大を推進しています。
2023年4月、アルフレッサ ホールディングス㈱に、「トータルサプライチェーンサービス」を企画・推進する新しい部署「トータルサプライチェーンサービス企画推進部」が発足しました。その部長として、アルフレッサグループの医薬品等製造事業を担うアルフレッサ ファーマ㈱から平井真人さんが兼任で出向し、他の新たなメンバーとともに活動を開始しました。
平井さんは、国内の大手電機メーカーのヘルスケア部門で研究開発職としてキャリアをスタートした後、バイオベンチャーや異業種に移り、様々な業務を経験しました。直近では研究開発部門のプロジェクトマネジメント、ライセンス交渉、アライアンスマネジメントなどを経験し、事業開発に関して社外に様々なネットワークを構築しています。
トータルサプライチェーンサービス企画推進部の業務は、アルフレッサグループ各社間のスムーズな連携をサポートする仕組みづくりと、国内外の研究開発型企業等との個別案件における課題解決に向けた取り組みがあり、メンバー全員で協力して業務に取り組んでいます。個別案件の探索のため、国内外のバイオ関連パートナリングイベント等に参加し、ビジネスマッチングを行っています。これにより、日本の医薬品市場へ参入を望む企業との接触機会を創出しています。このような活動には、平井さんの今までの幅広い経験や人脈が大いに活かされ、アルフレッサグループが目指す「トータルサプライチェーンサービス」の構築と運用への貢献が期待されています。
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トータルサプライチェーンサービス企画推進部長 平井さん
㈱ジェクスヴァル様との出会いは、2021年末でした。その時、平井さんは同社の企業理念である「難病・希少疾患の患者様やそのご家族が、1日も早く革新的なお薬にアクセスできる社会の実現を目指す」という考えに深く共感したと言います。その後、同社 代表取締役の加藤珠蘭様をはじめとするチームメンバーとの面談を重ね、このたびの資本業務提携に至りました。平井さんに詳しくお話を伺いました。
2021年、㈱ジェクスヴァル様との出会い
医薬業界での活動を通じて、平井さんと長年のお付き合いがあった㈱ジェクスヴァル取締役CBOの平嶋様との面談がきっかけでした。平井さんは、同社が武田薬品工業㈱様からスピンアウトした企業でその事業内容に非常に興味を持っていました。前述の企業理念をベースに、常に患者様ファーストを心がけて新薬の創出に取り組まれていることを聞いた平井さんは、協業の可能性を探るため、開発の進捗状況など積極的に情報交換を行いました。
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写真左から、㈱ジェクスヴァル 取締役CBO 平嶋 伸章様、平井さん
製薬業界に眠る数多くの良質な薬の原石。その隠れたポテンシャル(価値)を独自の技術で掘り起こし、磨き上げ、より早く患者様の求めている医薬品をお届けする、つまり眠っている「もったいない」薬の種を再度創薬のプロセスに循環させる、医薬品業界のサーキュラー・エコノミーを実現する独創性こそが同社の特長です。主力の新規医薬品候補はGXV-001。希少疾患用医薬品で開発の初期段階にあります。目指す適応症は脆弱X症候群、レット症候群、術後せん妄です。
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写真左から、【1人目】平井さん、【2人目】㈱ジェクスヴァル 代表取締役 加藤 珠蘭様、【3人目】㈱ジェクスヴァル 取締役CBO 平嶋 伸章様
平井さんの出向元であるアルフレッサ ファーマ㈱の経営理念は「時代が求める新たな“Unmet Medical Needs”※1に積極的にチャレンジする」ことです。希少疾患の定義は世界共通ではありませんが、患者数は世界で約3億人に上り、希少疾患は6,000種を超えると言われています。希少疾患のうち95%で治療法が確立されていない※2ことが現実であるため、そのようなご病気でお困りの患者様とそのご家族に貢献したいと、平井さんは強い思いを持っています。
2023年1月16日発表「株式会社ジェクスヴァルとの資本業務提携について」
アルフレッサ ファーマ株式会社 Webサイト「基本理念」ページ
※1. Unmet Medical Needs:需要があるにもかかわらず、いまだ有効な治療方法がない疾患に対する医療ニーズ
※2. 日本製薬工業協会「希少疾患 患者さんの困りごとに関する調査」
主力の新規医薬品候補「GXV-001」の適応症について
指定難病である脆弱X症候群は、遺伝子の異常により発症します。主な症状として、発達障害(知的障害、自閉傾向、注意欠如、多動、攻撃性など)が見られ、そのほかにも睡眠障害、不安、うつ、てんかんなど、さまざまな症状を伴うことがあります。また、細長い顔、大きな耳など身体的な特徴を示す場合もありますが、症状の現れ方には個人差があり、確定診断には遺伝子検査が必要です。日本国内には、推計で約5,000人の患者様がいらっしゃると考えられていますが、現状ではほとんど診断がなされておらず、欧米と比べて診断率が著しく低い状況にあります。現在、承認されている治療薬はなく、さまざまな研究開発が進められています。有効な治療薬の開発が早期診断・治療の促進につながることから、新たな治療薬の開発が望まれています。
レット症候群はおもに女児に発症する指定難病で、遺伝子の異常により発症する進行性の神経疾患です。生後6ヶ月から2歳頃までは発達が見られますが、その後、それまでに獲得した言語機能や運動機能が次第に失われていきます。特徴的な症状として、手が握手をしたような状態から動かせなくなったり、両手を洗うような動きを繰り返すことで、日常生活で手を使用するのが難しくなります。ほかにも、歩行障害、夜間の興奮や大声を伴う特徴的な睡眠障害、てんかん、無呼吸や過呼吸、背骨の湾曲(側弯)、強い便秘などの自律神経症状といった多様な症状が現れます。現在、症状を和らげる治療が行われていますが、病気の進行を止める治療法はまだ開発されていません。
術後せん妄は、手術を受けたことがきっかけで起こる一時的な意識の混乱です。手術後、いったん落ち着いた状態から、数日以内に急な変化が現れます。興奮して歩き回ったり、大声を出したりする状態(過活動型)や、逆に無気力でぼんやりとして反応が乏しくなる状態(低活動型)、あるいはその混合型があり、また、幻覚や妄想を伴うこともあります。特に高齢の方では発症頻度が高く、術後の回復や治療、看護の妨げになるだけでなく、入院期間の延長、認知症への進行リスクの上昇、死亡率の増加などが報告されています。そのため、早期の発見と適切な対応が重要とされています。
トータルサプライチェーンサービスで医薬品アクセス向上を支援したい
平井さんは、「トータルサプライチェーンサービス」の強化と拡大について、「これが私のテーマであり、『明日のアルフレッサグループをつくること』でもあります」と熱意を込めて語ります。
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アルフレッサグループのトータルサプライチェーンサービスの強化と拡大
「薬の開発にはたくさんのハードルがありますが、この度の資本業務提携を通じて、『GXV-001』に関してはアルフレッサ ファーマが保有する開発の知見を活かし、神経系疾患における共同開発から製造・販売に至るご支援が可能です。また、アルフレッサグループの医療用医薬品等卸売事業セグメントが、国内における輸送・配送のご支援を行えます。このように当社グループが持つ機能をトータルに統合して提供することが我々の果たすべき役割の一つだと考えています」と続けます。さらに、「今後、密に連携を取り合いながら、難病・希少疾患の患者様やご家族が求められている革新的なお薬を1日も早くお手にできるよう、医薬品アクセスの向上に引き続き取り組んでいきたい」と平井さんは未来を見据えます。
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㈱ジェクスヴァルの皆様と平井さん