インタビュー記事

調剤に「クラウド型電子薬歴」提案
デジタルツールで薬剤師の負担軽減に貢献

出典:ドラッグマガジン2024年10月号(株式会社ドラッグマガジン)

「健康に関するあらゆる分野の商品・サービスを提供できるヘルスケアコンソーシアム®」の実現を目指すアルフレッサグループ。医療用医薬品等卸売事業、セルフメディケーション卸売事業、医薬品等製造事業、医療関連事業(調剤薬局事業)の4つの柱で、地域の健康・医療への貢献を図る。その一環として、薬局にクラウド型電子薬歴「Medixs(メディクス)」を筆頭に多様なプロダクト・サービスを提案。国が進める「医療DX(デジタルトランスフォーメーション)」に沿って、調剤における薬剤師の負担を軽減し、患者へのサービスの充実を支援する。

休職者の雇用創出などを鍵に患者サービスをさらに充実

国内では65歳以上の推計外来患者数の構成比が約半分であり、それに伴って外来患者合計の年次推移は横ばいであることが報告されている。薬局にとっては調剤の対象となる患者は減少しておらず、患者サービスのさらなる充実には薬剤師数を増やすか、その生産性を上げることが求められる。「患者さまへのサービスを充実させるためには2つの方策があります」と「メディクス」を提供する株式会社アクシス(東京)代表取締役の川野尚吾氏。1つは、働く薬剤師の業務効率を上げること。「薬歴入力時間の短縮や在宅業務の効率化など、私たちが設計・開発・進化させてきた『メディクス』で業務効率化をサポートしていきます」と川野氏は意気込む。

もう1つは、現在就労していない薬剤師が活躍できる機会を創出することだ。アルフレッサのソリューション&イノベーション事業部プロモーション部長である堀田尚貴氏は「薬剤師が自宅等の薬局外でも服薬指導を行えるようにする方向で国が議論を進めていると認識しています。規制が見直されれば、『メディクス』のクラウドという利点を最大限活かすことができます。服薬指導から薬歴の入力まで薬剤師がご自宅等の薬局外で対応できるようになり、働き方改革につながります。例えば、ご事情によりやむを得ず休職されていても、短時間業務に関わることも可能になります。薬剤師の雇用機会の創出によって患者さまの利便性を高めていき、調剤薬局さまに役立つサポートをしていきたいと考えています」と社会の課題を解決していく構えを見せる。

薬剤師を含むチームが設計・開発したクラウド型の電子薬歴

超高齢社会の進展、社会保障費の増加、技術革新・デジタル化と、医療をめぐる環境は変化を続けている。調剤に関して言えば、電子処方箋やオンライン服薬指導への対応、調剤後のフォローアップ業務の推進など、薬局・薬剤師の業務負担は増加し続けている。根底にあるのは対物業務から対人業務へのシフトであり、薬局に対して、地域医療への貢献やかかりつけ機能への期待が高まっている。対人業務へのシフトを後押しするツールの1つとして期待されるのが、電子薬歴だ。

そのような中、医療・薬局業界に特化したSaaS(Software as aService)を提供するアクシスが、薬剤師資格保有者を含むチームを組成して設計と開発を行った。調剤薬局のITシステムを構築・運用する際、使用者が管理する施設内にサーバーやネットワーク機器、ソフトウェア等を設置して運用するのが「オンプレミス型」。ハードウェアの購入や、ソフトウェアのインストールをすることなくインターネット経由で提供されるシステムやサービスを利用できるのが「クラウド型」である。「メディクス」は、日本初のクラウド型電子薬歴として普及している。

オンプレミス型と異なり、クラウド型は更新作業が遠隔かつリアルタイムで実現できる。「法改正等があった場合も、ベンダーのスタッフが現場に赴いてソフトウェアを書き直すことなく、サーバーの修正で全国の薬局が翌日から更新版を利用できます」(川野氏)。

災害時にデータが保全されるのもメリットで、今年1月の能登半島地震でも、被災した薬局の情報が他の薬局で閲覧可能だったという。いつでもどこでもクラウドにアクセスできることは、国が進める在宅業務の推進、薬剤師の働き方改革の点でも有用性が高い。セキュリティ対策としては、薬歴情報の保護のため、厚生労働省公表の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に準拠してシステムを運用。万一、利用機材の盗難、紛失があった場合には、不正な通信アクセスは遮断される。

アルフレッサの堀田氏は「アクシスさまはクラウド型電子薬歴の分野でのリーディングカンパニーとしての地位を確立されています。調剤薬局を取り巻く環境が変化しており、多様化する薬局業務の効率化および薬局に求められている新たな取り組みへの価値提供を行うためには、アクシスさまと連携した支援をすることが必要だと判断しました」と背景を説明する。

図表① メディクスの画面

服薬指導・薬歴作成に必要な頭書きや処方の比較、過去の指導内容を一つの画面で確認。他の画面を開く手間がなく、必要な情報が1画面に凝縮された指導画面と、クリックおよびドラッグ&ドロップで操作できる簡単さが「メディクス」の画面の特長。

「システム」ではなく「現場」に合わせる 薬剤師の想いを実現

2014年の「メディクス」リリース後も、現場で利用している薬剤師の声を取り入れ、随時機能に実装している。

例えば、入力作業については、キーワードを選択して、服薬指導に沿った薬歴を簡便に作成できる。「音声入力を含め、現場のあらゆるニーズに沿った方法を準備しています」(川野氏)。指導文のテンプレートが充実していることが特長だが、店舗ごとのオリジナルテンプレートを作成することもできる。本部で作成し、チェーン全店で共有するなどの柔軟な対応も可能だ。

在宅業務については、「いつでも、どこでも使える」前述のクラウドの特長をベースに、訪問報告書・計画書の作成、タブレット端末のカメラ機能による写真の登録など、さまざまな機能を搭載し、効率化を可能にしている。

コストについては、導入時の初期費用を安く抑え、導入後も安心して利用し続けられる料金体系にしたという。加えて、同一薬局内ならパソコンを何台設置しても、月額利用料は変わらない。また導入時のサポート体制も充実しており、データ移行から端末の設定・設置、使い方のレクチャーまで、スムーズに利用開始できるようにサポートしている。

現在、「メディクス」は全国47都道府県の薬局の現場で採用されている。アルフレッサは、アクシスを協業パートナー企業として、調剤薬局に「メディクス」などを提案してきた。「変化する医療環境に柔軟に対応した『メディクス』の普及を通じて、調剤薬局経営と患者さまサービスに積極的に貢献していきたい」と堀田氏は力を込める。

医療現場における課題解決への使命感

川野氏は、今後の取り組みについて「薬局業務をいかに効率化するか。国の動き、マーケットの動きを見ながら、調剤薬局への貢献を図り、アルフレッサグループが目指すヘルスケアコンソーシアム®の一翼を担っていきたい」としている。

アルフレッサは、医療従事者の業務負担軽減に資するプロダクト・サービスの提案を通じて医療に貢献する意向だ。

堀田氏は「医療のあり方が大きく変わろうとしている中、社会インフラである医薬品流通を担う当社では、さまざまな社会課題への対応も見据え、ヘルステックを活用した医療現場の効率化支援の取り組みを多角的に進めています。医薬品卸として、『メディクス』のような医療現場における課題解決につながるプロダクト・サービスを届けていくことも当社の使命だと考えています。

医療の各現場で、より良い医療を効率的に提供できる環境の構築を支援し、医療・健康分野においてさまざまな商品・プロダクト・サービスを提供できるヘルスケアコンソーシアム®を実現していきます」と展望を語った。