食べるのが楽しみになるような栄養補助食品を作りたい | ティーエスアルフレッサ株式会社 CS推進部 イノベーション推進課 杉村 佳南 食べるのが楽しみになるような栄養補助食品を作りたい | ティーエスアルフレッサ株式会社 CS推進部 イノベーション推進課 杉村 佳南

「食べるのが楽しみになるような栄養補助食品を作りたい」。

杉村さんは、仕事でかかわる病院勤務の管理栄養士や医療従事者の方たちの声を聞くうちに、このような思いを抱くようになったそうです。自身も管理栄養士の資格を持つ杉村さんが始めたチャレンジは、やがて大手食品メーカーとの業務提携や県の補助金が交付される本格的な製品開発事業へと成長します。彼女の挑戦がどのように進んでいったのか、話を聞きました。

99敗でも“1勝”すればOK!
「ワクワクする仕事をしよう」
背中を押した上司の言葉

学生時代の研究室で栄養学を学んだ私は、卒業後は病院などに向けた補助食品の紹介をする仕事に就きたいと考えて管理栄養士の資格を取得しました。自分が病院などで管理栄養士として働くよりも、良い製品の紹介やニーズに合った提案活動をするような形で医療に携わりたいという気持ちが強かったんです。そこで当時の教授に相談したら、ティーエスアルフレッサを紹介していただきました。コーポレートサイトを見てみたら“管理栄養士の資格が生かせます”と書かれていたので、自分のイメージと合う仕事ができそうだと感じ、入社を希望しました。入社後はCS(カスタマーサポート)推進部に配属され、病院や施設に医療食の営業をしていました。担当エリアでの営業活動を重ねる中で、より経営的な視点での提案営業ができるようになりたいと思い、入社5年目には栄養経営士の資格を取得しました。実は日頃から管理栄養士や医療従事者の方たちのニーズに触れ、既存製品の課題点について考えさせられることも多く、新たな栄養補助食品の開発の必要性を感じていたんです。今回の挑戦のきっかけになったのは、その翌年です。医薬推進部への異動が決まった際の面談で、当時の垣村営業推進本部長から「1勝99敗でもいい。100回挑め! ワクワクする仕事をしよう」という言葉を掛けられて、私は“新しい栄養補助食品を開発する”という目標に向かって動き出しました。

99敗でも“1勝”すればOK!「ワクワクする仕事をしよう」背中を押した上司の言葉

管理栄養士や医療従事者の方たちの“声”と
チチヤス株式会社との提携

私はいつも“失敗を恐れず、まずはやってみる!”ということを大切にしながら仕事に取り組んでいます。今回も“新しい栄養補助食品”というキーワードだけで具体的なことは何も固まっていませんでしたが、まずはいろいろな食品メーカーさんにご相談してみようと思い、とにかくさまざまな会社を訪問することから始めました。例えば、ある和菓子製造の会社で話をした際には、和菓子の性質上、高齢者が喉を詰まらせてしまう可能性があることに気が付きましたし、有名な調味料メーカーに伺った際には、1回で使用する分量が少ない調味料だと十分に栄養素を摂取できないなど、製品化する上での課題も浮き彫りになりました。
こうして多くの食品製造業者に相談を繰り返す中、広島に本社を置く老舗の乳製品メーカー、チチヤス株式会社と話が進むことになりました。きっかけは、私がアイスで“新しい栄養補助食品”を作りたいと考えるようになったことです。夏場になると患者さんや高齢の入居者さんたちの食欲が落ちてしまうということもあり、管理栄養士さんたちから“アイスの栄養補助食品はないのか”というお問い合わせをたくさんいただいていました。アイスの栄養補助食品が市販されていないわけではありませんが、エネルギーもあまり高くないし、たんぱく質も少ない。また、アイスを提供したいけれど、溶けやすいという理由から提供を諦めている病院・介護施設も多くありました。“それなら新しく作ればいいのでは?”と思い立ったんです。また、例えば、従来のゼリーの栄養補助食品は甘すぎて、毎日食べ続けることに苦手意識を持つ方も多いです。苦手だけれど、病気を克服して生きるために食べなければいけない、という義務感で食べるのでは体にもよくありません。せっかく“新しい栄養補助食品”を作るのであれば、入院している患者さん、体が不自由になって介護施設に入所している方、全ての方にとって、食べるのが楽しみになるような“おいしいもの”を作りたいと考えました。
栄養補助食品のアイス開発を目指すと決めた際、乳製品メーカーとして長い歴史を持つチチヤス株式会社との提携は、私のチャレンジを大きく前進させました。

健康・医療関連
産業創出支援事業費補助金への申請
膨大な資料作成とデータ収集の日々

健康・医療関連産業創出支援事業費補助金への申請 膨大な資料作成とデータ収集の日々私のプロジェクトの中でも大きな取り組みとなったのが、広島県が新たな事業を始める企業に対して費用面で支援する「健康・医療関連産業創出支援事業費補助金」への申請でした。私は申請書類の作成経験はゼロだったものの、毎日県庁に足を運びながら書類作成に取り組みました。申請書類を作成し始めた頃は、新製品開発に向けた思いが強すぎて何でもかんでも盛り込んでしまい、狙いや目的が分かりにくいとご指摘を受けました。それからは修正作業や資料の見直しをしながら県庁に通い詰める毎日で……担当の方に細やかにご指導をしていただきました。とにかく“論理的に書きなさい”と言われ続けたことを覚えています。頭から煙が出るんじゃないかと思うくらい大変でしたが、毎日資料を確認していただくたびに少しずつ添削箇所が減って、ようやく申請にこぎつけた時には、本当に達成感がありましたね。根気よくご指導してくださった担当の方にも感謝しています。また、自分が抱えている業務もある中で、時間のやりくりやタスクの管理にも苦労しました。自分一人では抱えきれなくなって途方に暮れることもありましたが、上司の松村部長が身近で支えてくださったので、乗り切ることができました。苦労のかいがあって、令和5年度の補助金申請は採択され、広島県より600万円が交付されることとなりました。
もう1つ大きな取り組みとなったのが、アイスの開発に向け、協力医療機関を通じて在宅療養患者10名の食事内容や補助食品摂取前後の体組成、血液データの収集に取り組んだことです。栄養状態のモニタリングのために毎日の食事内容を患者さんに撮影していただき、それを私がアプリに取り込んで栄養価計算を行いました。ご高齢な方の場合、スマホでの写真撮影が難しかったり、献立に使っている食材などが見えにくかったりすることも多く、そのたびに私がそれぞれの患者さんのご自宅を訪問して、食事内容をヒアリングしながら手入力しました。地道な作業でしたが、はじめは元気がなく言葉数も少なかった患者さんが、補助食品を摂取して栄養状態が良くなるにつれてどんどん元気になり、最後に“ありがとう”というメッセージカードを食事の写真と共に送ってきてくださった時は、自然と涙が込み上げてきました。こうして収集した5週間分のデータは、在宅医療に携わる医師の方たちや協力医療機関に喜ばれた上に、県立広島大学での論文化も予定されています。本当に取り組んで良かったと、今でも思います。

“新しい栄養補助食品”
今後の展望と新たな取り組み

今回のチチヤス株式会社との共同プロジェクトで開発されたアイスは、アルフレッサグループ全体で流通させて販売していく予定です。医薬品の卸業者であるアルフレッサのロゴが記載されたアイスを患者さんにお届けできることは、私たちの会社の新しいビジネスモデルとなり、これまでとは違う利益体系を生み出すこととなります。私の挑戦が会社全体にも波及し、今後も大きく広がっていくと思うと、うれしいです。この事業は昨年に続き令和6年度の補助金にも採択され、現在は3つの新しい取り組みに挑戦しています。1つ目は、栄養補助食品のゼリーを毎日食べられている病院の入院患者さんや介護施設の入所者さんを対象に、週に1~3個を開発したアイスに置き換え、体組成や血液データがどう変化するかをモニタリング・効果検証を行うこと。2つ目は、調剤薬局にご協力いただいての実証販売です。近隣病院の医師等とも連携し、本当に買っていただけるのかを試してみようと思っています。
3つ目は、地域包括ケアシステムの構築に向けた取り組みです。患者情報共有システムを改良し、食事の見える化を通じて栄養指導を行いやすくしたいと考えています。また、認定栄養ケアステーションの取得に挑戦するとともに、アルフレッサグループの病院や診療所、介護施設、調剤薬局とのつながりを生かして医療と介護で連携し、地域包括ケアシステムを構築していきたいと考えています。アルフレッサグループ全体を巻き込み、それぞれの地域に密着した私たちだからこそできるサービスを展開し、各地の健康に貢献したいです。

ティーエスアルフレッサ株式会社 CS推進部 イノベーション推進課 杉村 佳南
ティーエスアルフレッサ株式会社 CS推進部 イノベーション推進課 杉村 佳南
ティーエスアルフレッサ株式会社 CS推進部 イノベーション推進課 杉村 佳南
ティーエスアルフレッサ株式会社 CS推進部 イノベーション推進課 杉村 佳南
ティーエスアルフレッサ株式会社 CS推進部 イノベーション推進課 杉村 佳南
ティーエスアルフレッサ株式会社
CS推進部 イノベーション推進課

杉村 佳南すぎむら かな

資格
管理栄養士、栄養経営士
強み
粘り強い
趣味
テニス、カフェ巡り、旅行、ドローン

杉村さんのプロジェクトを
フォローした上司コメント

ティーエスアルフレッサ(株)推進本部 CS推進部長 松村 貴幸

杉村さんから栄養補助食品開発のアイデアを聞いて、非常に面白いし、今後の展開が楽しみになりました。基本的に彼女がプロジェクトを進めていきましたが、外部機関やさまざまな企業を訪問する際は、常に一緒に行動して見守るようにしていました。彼女が“どうしよう”と迷った時に的確なアドバイスができるよう、準備しながら伴走していた感じです。現在、ゼロからイチの創出と実現に挑戦できるイノベーション推進課という新たな部署を作り、杉村さんがメインでプロジェクトを進めています。新たな挑戦になりますが、失敗を気にせずにどんどん前に進めてほしいと思っています。一層の活躍を期待しています。ティーエスアルフレッサ(株)
営業推進本部 CS推進部長 松村 貴幸