セルリソーシズ(株)の羽田PDC開設
~再生医療という希望をすべての人に届ける~

  • (左から)セルリソーシズ(株) 松崎 淳平さん、有田 孝太郎社長、有田 夏怜さん

 アルフレッサグループは、2032年度をゴールとした「アルフレッサグループ中長期ビジョン」を策定し、事業ポートフォリオの拡大と変革を推進しています。事業戦略における「新規事業」の一環として、「再生医療サプライチェーン」を掲げ、再生医療関連事業を行うセルリソーシズ(株)が、国産の細胞原料(マスターセル)の提供や、細胞加工物の製造および国内外のアライアンスパートナーとの提携等を通じた包括的CDMOサービス※2の提供体制の構築を進めています。セルリソーシズ(株)は3月3日、細胞・遺伝子治療領域におけるCDMOサービスを提供するための拠点として羽田PDC(プロセスデベロップメントセンター)※3を2025年10月予定で新設することを発表しました。今年4月に設立3年目となるセルリソーシズ(株)を率いる代表取締役社長有田孝太郎さんとメンバーに、再生医療にかける想いを伺いました。

※1 ご参考:2025年3月3日発表「セルリソーシズ株式会社が細胞・遺伝子治療のCDMOサービスを展開するプロセス開発センターを羽田に新設」

※2 CDMOサービス: CDMO(Contract Development and Manufacturing Organization)サービス:医薬品の製造工程の開発から、治験薬や商用製造までを受託するサービス

※3 PDC: Process Development Centerの頭文字

アカデミアと産業との間に生まれているギャップ

 「再生医療において、一番の課題は、アカデミアと産業との間にギャップが生まれていること」と指摘するのは、セルリソーシズ(株)の有田社長。「iPS細胞においても始まりは日本です。しかし、産業化は欧米が10年進んでいると言っても過言ではありません」と言います。「日本の再生医療等製品は手作業で製品化されているが、欧米では自動化が進んでいます。アカデミアと企業が連携し、研究成果を迅速に製品化する体制が不可欠。プロセスの自動化が進むことで、効率的かつ高品質な製品の供給が可能となり、結果として市場での競争力が高まると考えます」と強調します。セルリソーシズ(株)は、「再生医療という希望をすべての人に届ける」というミッションを掲げ、再生医療産業を活性化させたい、盛り上げたいと強い想いをもって取り組んでいます。

  • セルリソーシズ(株) 有田社長

自分のやりたいことを実現する、アルフレッサグループのロールモデルに

 有田社長は四国アルフレッサ(株)出身。その後、アルフレッサ ホールディングス(株)に出向し、事業開発部に着任。再生医療を中心にヘルスケアの新規技術に知見を深め、2022年11月より代表取締役社長に就任しました。その就任のきっかけは、意外にも「手挙げ」と有田社長は言います。アルフレッサ ホールディングス(株)出向時代にセルリソーシズ(株)立上げのプロジェクトメンバーとして参画。「再生医療の可能性」への興味と、常に持っていた「新規事業をやりたい」という思いから、セルリソーシズ(株)の運営をどうしていくかの議論になった時、このチャンスを逃す手はないと、手挙げをしたと言います。自身のキャリアパスにおいて、自分のやりたいことを実現することで、アルフレッサグループでのロールモデルになればいいと考えたそうです。

管理薬剤師から再生医療分野へ

 「患者様の命を救うことができる薬は、かけがえのない存在だと思い薬剤師になりました。まだ見ぬ薬が新たな患者様を救うことができるように、その一助となりたかった」というセルリソーシズ(株)経営企画部の有田夏怜さんは、これまで管理薬剤師としてのキャリアを歩んできましたが、「患者様を薬で救う」という目的は変わらない再生医療分野に飛び込みました。日本で再生医療の産業化を目指すには、「国内企業も成功事例が少なく、育成された人財も少ないという課題があります」と話す有田夏怜さん。その課題に対して、セルリソーシズ(株)では知見を持っているグローバル企業からノウハウを取得して、自社における人財育成が必要と考えており、有田夏怜さんは主にグローバル企業数社とのアライアンス締結の業務を担っています。昨年度はサーモフィッシャーサイエンティフィック社様とのアライアンス締結を主導で進めてきました。契約締結に必要な英語スキルについて尋ねると、「実はそれほど英語が得意ではないのですが」と謙遜しつつも、欧州企業へのプレゼンテーションは一人でこなしています。週2回のオンライン英会話スクールで学んでいるという日々の努力が確実に成果となっています。

  • セルリソーシズ(株) 経営企画部 有田 夏怜さん 

グローバルをつなぐ羽田PDC

 羽田PDCのオープンで、日本国内に3拠点を持つことになるセルリソーシズ(株)。郡山CPC(セルプロセッシングセンター)※4では、間葉系幹細胞のマスターセルバンク(細胞原料を安定供給する)機能を、殿町CPCでは、CAR-T細胞治療薬のCMO(製造受託)機能を持っています。羽田PDCは、これまでの2拠点にないプロセス開発の機能を持ち、同社のCDMO(開発製造受託)事業の展開を実現させる拠点です。また、羽田イノベーションシティという羽田空港に近い立地のため、ターゲットとしているグローバル企業に対して、ヒトとモノの面でも協業を進めやすい環境が整っています。「羽田PDCをプロセス開発の中心となる拠点とし、創薬シーズを持つアカデミアと産業化を担う製薬企業や医薬品研究開発のベンチャー企業をつなぐ架け橋の役割になりたい」と有田社長はセルリソーシズ(株)の未来を見据えます。

※4 CPC: Cell Processing Centerの頭文字

  • ミーティングで業務進捗を共有する
    (左から)有田 夏怜さん、有田社長、松崎 淳平さん

  • セルリソーシズ(株)のミッション(使命)とバリュー(提供価値)が掲げられている羽田PDCオフィス

  • 細胞原料の供給を担う郡山CPC

  • 殿町CPCでの細胞培養の様子

プロセス開発におけるセルリソーシズ(株)の人財育成

 プロセス開発とは「製品の生産に対して実験と評価・分析を繰り返し、最適な工程を開発すること」です。再生医療のプロセス開発では使用する装置が重要ですが、いくら高機能で高価な装置があっても、その装置を使うことができる人財は限られています。また、工程によって装置製造メーカーも様々で装置ごとに使用方法を習得するトレーニングが必要になります。セルリソーシズ(株)は、羽田PDC立ち上げに向けた人財育成の一環で、装置製造メーカーによるトレーニングを実施しています。
 2023年、セルリソーシズ(株)にキャリア入社した殿町CPC製造部品管理課の松崎淳平さんは、プロセス開発を担う人財の一人です。
 「学生時代に遺伝学を学んだ際に細胞に惹かれ、細胞を使った治療に関する仕事を軸に就職活動をしていました」と松崎さんは学生時代を振り返ります。念願が叶い、前職では再生医療の自社パイプラインを持つ会社で品質試験に関わる業務に従事していましたが、再生医療等製品を世に出す直前に事業中断を経験。その悔しい思いを胸に、「再生医療の分野で、安定した品質の製品を世に出すことに挑戦できる場があるセルリソーシズに入社しました」と言います。「セルリソーシズに入社して任せてもらえる範囲が増えたことで、視点が変わりました。例えば、細胞の培養解析で、この細胞の培養がなぜ失敗したのか、なぜ成功したのか、あらゆる視点から理由を探るようになりました。任せてもらえるからには、貢献していかないといけない」と語る松崎さんは穏やかな表情を浮かべながらも、言葉には力強さが垣間見えます。
 「スクラブ(医療着)に袖を通すと気合が入ります。おまじないみたいなものです」と、大切な時にはこのスクラブを着るルーティンを欠かさないという松崎さん。殿町CPCでは、製造された細胞の特徴が求めている基準に達しているかを品質試験等で確認する解析業務に携わっています。羽田PDCの本格稼働に向けて、導入する装置製造メーカーの一つであるミルテニーバイオテク社様のトレーニングも完了し、着々とプロセス開発に向けた準備を進めています。「装置だけでは製造、品質試験ともにクライアントの要求を満たすことができないため、それに応えられる技術者になりたい」と松崎さんは抱負を語ります。

  • セルリソーシズ(株) 殿町CPC製造部品管理課 松崎 淳平さん

「患者様へ届くまで」を見据えたプロセス開発

 「患者様へ届くまでを見据えたプロセス開発が、再生医療の産業化の加速につながります」という有田社長は、セルリソーシズ(株)とアルフレッサグループが持つ医薬品等のトータルサプライチェーンを組み合わせることで、細胞原料の調達から医療機関納入まで一括運用できる再生医療サプライチェーンサービスの構築を目指しています。「すべての人に、いきいきとした生活を創造しお届けします」というアルフレッサグループの理念のもと、「再生医療という希望をすべての人に届ける」ミッションを叶えようと、セルリソーシズ(株)メンバー一丸となって着々と羽田PDCのオープンに向けた準備を進めています。

  • (左から)有田社長、有田 夏怜さん、松崎 淳平さん