インタビュー記事

再生医療分野のサプライチェーンをシームレスにつなぐ体制を構築

ドラッグマガジン 2023年6月号 特別企画「プレゼンスを高める医薬品卸」掲載

「健康に関するあらゆる分野の商品・サービスを提供できるヘルスケアコンソーシアム®」を目指す姿として掲げるアルフレッサグループ。その中核を担うアルフレッサは、2022年4月、『再生医療という希望をすべての人に届ける』を理念に掲げた新会社セルリソーシズを設立した。セルリソーシズは、細胞を原料とした製品の製造を行う準備を進めている。代表取締役社長の有田孝太郎氏は、「『高品質な細胞原料を安定的に製薬企業や(バイオ)ベンチャー企業へ提供すること』を事業として、再生医療の研究・開発を目指す会社や団体の支援をしていく」とその狙いを語った。

セルリソーシズ代表取締役社長 有田孝太郎

セルリソーシズ株式会社

設立:2022年4月21日。資本金:4億5000万円。事業内容:細胞原料の供給、特定細胞加工物の製造、再生医療等製品の製造。所在地:東京都千代田区内神田1-12-1

1環境・背景について

アルフレッサグループの理念体系では、「常に安心できる商品・サービスを提供し、お客さま満足度の向上に努めます」と謳っている。つまり、アルフレッサグループの社会的使命は医薬品を安心安全誠実に供給することだ。「19-21 中期経営計画 更なる成長への挑戦 ~健康とともに、地域とともに~」の期間では「再生医療等製品流通の確立」をテーマに掲げ、再生医療等製品の全国流通ネットワークを構築していくとともに、創薬ベンチャー企業との連携を進めた。「その過程で、他家細胞を用いる再生医療等製品は原料の多くを輸入に頼っていることが再生医療等製品の普及・安定供給の課題であることを認識し、国内にて細胞原料を安定的に供給する体制を構築することが必要であると考えた」と有田社長は語る。 この課題の解決に向けた取り組みをより一層推進するため、「22-24 中期経営計画 未来への躍進 ~進化するヘルスケアコンソーシアム®~」において、グループ経営方針として「新たな価値の創造」を掲げ、再生医療関連事業と再生医療等製品の流通を行うことによるトータルサプライチェーンサービスの構築を目指している。そして、再生医療関連事業として、国産細胞原材料(マスターセル)の提供事業と自家・他家型の細胞加工物の製造事業を行うのがセルリソーシズとなる。

2事業について

セルリソーシズは現在、製造拠点が郡山Cell Processing Centerと殿町Cell Processing Centerの2か所あり、国産細胞原材料(マスターセル)の提供事業と自家・他家型の細胞加工物の製造事業を行う。 国産細胞原材料(マスターセル)の提供事業では、日本国内にある提携医療機関からの支援のもと、健康な人から同意を得て提供を受けた組織や細胞を使用し製造した細胞原材料(マスターセル)を再生医療等製品の開発を進める企業や団体に提供する。他のCMO企業への提供も視野に入れている。提供する細胞は、胎盤、羊膜、臍帯由来の細胞だ。従来であれば出産後に胎児と一緒に産み出された後に医療廃棄物とされている胎盤、羊膜、臍帯などの医療廃棄物を再利用するという。 自家・他家型の細胞加工物の製造事業では、製薬会社や研究機関等のニーズに沿って、本人由来、他人由来の細胞製造を行う。有田社長は、製薬企業や創薬(バイオ)ベンチャー企業などに対して、「創薬等の開発に経営資源を集中することをサポートしたい」と話し、アカデミア・研究機関に対しても「再生医療等製品の実用化を目指した研究課題や開発の推進を支援していきたい」と意欲を示す。

3医療用医薬品等卸売事業とのシナジー

アルフレッサグループは医療用医薬品等卸売事業が主たる事業であり、2か所の再生医療流通ステーションと9か所の再生医療等製品保管庫を設置し、既に流通を受託できる環境を整えている。これまでに治験薬をはじめ、再生医療等製品の流通の実績もある。そこに製造機能をもつセルリソーシズが加わることにより、再生医療分野においてサプライチェーンの川上から川下までシームレスにつなぐ体制が構築される。 有田社長は「グループとして、マスターセルの提供だけでなく、保管・輸送やデータマネジメントまで包括的に提供することも提案していきたい」と医療用医薬品等卸売事業とのシナジーも視野に入れる。再生医療の担い手である世界中の製薬企業や創薬(バイオ)ベンチャー企業が、製品化に向けた研究開発や治療方法を確立しても、すべての開発企業が大手メーカーのような既存の販売網や供給体制を必ずしも保有していない。創薬等の開発に経営資源を集中するため、コストを掛けて、新たな販売網や供給体制を自ら構築するよりも、アルフレッサグループの細胞採取、細胞保管、細胞輸送、加工培養などのバリューチェーンの活用を提案していく考えだ。 営業面では、アカデミア・研究機関、医療機関は、医療用医薬品等卸売事業において既に取引関係があるお得意様で、また製薬企業も長年の強固な信頼関係を持った取引先になる。この関係を活かしセルリソーシズが提供できる受託サービスを提案していく考えだ。 営業体制としては、医薬品等製造事業を担うアルフレッサ ファーマ株式会社など、グループ内の各事業セグメントが持つ強みを活かし、事業セグメントを越えた協力体制を強化して支援していく。

4ビジョン

『再生医療』は、私たちのからだにある組織や臓器に機能不全や機能障害が起きている場合に、細胞や細胞を加工する特殊技術を用いて、損なわれた機能を再生する技術である。 セルリソーシズは『再生医療という希望をすべての人に届ける』を理念に掲げている。 有田社長は、「セルリソーシズは、再生医療の製造・流通過程で必要なヒト(同種)細胞原材料の調達から細胞加工物の製造までを担い、再生医療を必要とする人々のために、高品質で安定した細胞の提供を行っていく。また、今後増加する創薬モダリティに対するニーズにも幅広く応えられるよう、特殊技術や知識の習得に励み、多くの病気や怪我で苦しむ人々に新しい治療を提供できるよう、取り組んでいく」と力を込めた。 また「今後、アルフレッサグループはセルリソーシズを中心に細胞製造の知見をより一層高め、製薬企業および医療機関にとって安心して患者様へ再生医療をお届けできる存在となることを目指している」と語り、アルフレッサグループとして、再生医療分野でも社会的使命である医薬品等の安定供給に貢献していく考えを示した。